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2月12日 晴れ
JR川越線の小さな駅より徒歩15分、日差しが強くコートを着て歩くと汗ばんでしまう。
余裕を見て出てきたせいで予定時刻より30分近く早くついてしまった。
どこかで休めるかと歩いたが、何もない。収穫をとうに終え乾いた田んぼが広がり遠くに小さなアパートが見える。田んぼわきの梅の木の蕾はまだ硬い。

そういえば、今年は雪が積もらない…などとぼんやり考えながらスマホを開くと渋谷区のニュースが目に飛び込んできた。
『同性カップルを「婚姻に相当する関係」と認め、証明書を発行する条例案を提出する…』と。
そうか、渋谷区で…同性パートナーを…。考えがまとまらず何度も読みかえす。
そしてぶつぶつ独りごちて、『日本の話か…』と気づく。
同性婚はどこか遠くの国のお話と思っていたことに気づき、苦笑いする。

ニュースに気を取られ歩いていたらずいぶん遠くまできてしまった。
今日は就職面接だ。遅刻するわけにはいかないと踵を返す。

 
3年半ほど前より特別養護老人ホーム(特養)で働いている。前に6年ほど他業種で働いていたが、半年もすると介護の仕事の方が板についていることに気づき、最初は向いているのかと思い調子にものったが、生きて生活する延長であり特別なことではないからだと気づいた。
私は32歳なので、社会生活歴32年。
母子家庭だった時期があり、赤子の時は近所のご夫婦にフロに入れてもらい、その家の目の不自由なおばあちゃんに大変可愛がってもらったそうだ。小学校に上がってもよそ様の家でおやつをいただくことは多々あった。イナゴの佃煮とかw
このようなことはとくに最少単位の社会である家族でごく自然に行われ、介護もまた然りなのだ。
時が来たので、社会福祉法人のスタッフとしてお手伝いをさせてもらう。順番がきた。ただ、それだけのこと。

小走りしたかいあって、時間5分前にベルを押すことができた。
建物は小さなグループホームのように見えるが、看取り期の在宅介護を支えるための医療施設だった。
応接室に通されエントリーシートの記入後、すぐ面接担当者が入ってきた。
50代半ばぐらいだろうか?電話で話していた時の少し高めの声と、丁寧な言葉づかいからの優しげな男性の印象より、骨格のしっかりした、ちょいワル風w
一目で介護現場経験者だな…と感じる。
この後、職務経歴書で簡単に質問され面接開始10分で採用をいただき、2時間程このちょいワルおやじの介護に対する熱意を聞くことになる。
(私の入職予定の施設は近日オープンの老人保健施設〈老健〉です。
 少し専門的な話ですが、老健は本来リハビリテーションを行い在宅で生活ができるようにするのが目的。ただ現在、老健の多くは長期入所の老人ホームであり安価な特別養護老人ホーム〈特養〉の入所待ちのために利用されており家に帰れる方は約9%。
入院⇒老健⇒特養のサイクルが出来てしまっているのです。)
『利用者の多くは在宅復帰を望んでいる。家族の介護負担も軽減しつつ一緒に暮らす道を提示するのは医師や看護師、理学療法士、ケアマネじゃなくて一番近くで介助する介護士だ!介護士中心の本気で在宅を目指せる老健を創りたい!』と。とにかく純粋なちょい悪おやじ。
障がいは社会的なものであると同時に個人的なものである。
介護とは、生きてきた背景、大切にする想い、希望に沿って本人の残存能力を使い、本人の意志をもって生活を送る手伝いをすること。
介護保険の利用者は、世話がなければ何もできない老人でなく、ともに笑い、喜びや希望を分かち合う社会の一員なのだ。
当たり前のことだけど全員に個々の人生がある。

雑談から、家族構成の話になり、当初の予定通り、初めての公な場所でのカミングアウトをする。
声が上ずって、少しつかえて、
『お、お話したいと思っていたのですが、パートナーが女性で婚姻関係と同様に思っています。…』そのあとは落ち着いて話すことができた。
『素敵なご両親です。Yさんとお相手の方のことも理解しました。』とちょい悪おやじ。
思いがけず、全肯定されて…ホンマかいな?絶対、中年のおっさんに私たち乙女の関係なんて理解できないし!(笑)と心の中でわるいクセの悪態をつきながら安堵する。

私たちは目に見えない存在だから、本当にどこまで理解されているかはわからない。
様々な弊害を危惧して、大切な場面でセクシュアルマイノリティであることを隠すケースが多いからだ。

私たちの人生を知っていてほしい。
10代後半から今まで時に懼れ、時に突っ走り、幾度もカミングアウトをしてきた。気が付いたのは彼らがただ、私の人生を知らなかったということ。
職場という公の場でカミングアウトをするまでには10年かかった。
よく耳にするのが【プライベートは仕事に持ち込まない】という言葉。わたしがレズビアンであることは嗜好じゃなくて私の人生なのだ。

現在の医療制度では重要な手術の承諾はもちろん、ICUに入ることすら親族でなくては許されないことがある。
今の社会制度では、不動産などの財産を共同で維持することができない。
介護はどうだろうか?私たちの人生は尊重されるだろうか?
…最期に手を握れるだろうか?
私は、彼女の健康だったり、好きな事、笑顔でいられることを一番に考えている。家計は一緒だし、大切な決断をするときは必ず相談する。
これが婚姻関係と同等でないはずがない。

面接場所を後にするとき、ただの一介護職員になる私に、恐縮するほどいつまでもちょい悪オヤジがお辞儀をしていて、(私も失礼をしてはいけないとお辞儀をするんだけど)とうとう自動扉が閉まるまで頭をあげなかった。
形式的な事なのだけれど、大切に扱われた気がして…少し感動してしまった。
いつかこうゆうカッコイイ大人になろう。

外の気温はさらに上がっていて2月とは思えない陽気だ。コートはもう着ていない。
自然と足が速まる。もう走って帰りたい気分だ!
素直にうれしい!1日のうちほとんどを過ごす職場でそのままの私でいられるから。それだけでもう、このフィールドで全力をだす準備ができている!
心なしかさっきより梅の蕾が膨らんだ気がする。


2015/2/12(木) 晴れ  陽

 
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